まず定期的に病院や診療所へ出向いて外来で受診することが難しくなった場合です。たとえば歩いたりバスに乗ったりして病院へ行く事が物理的に難しくなったり、身体的には元気でも、物忘れが進んで通院が困難になる場合もあります。
次に、病院で長期間過ごすことはやめて(あるいは病院で長期間過ごすことができなくなり)、在宅で暮らすことを選んだ場合も在宅医療を受けることができます。たとえば慢性的な疾患があっても、病院で徹底的に治療するのではなく、在宅で出来ることをする決意をするなどのケースです。ありません。病気の種類によって、在宅医療を受けることができたり、できなかったりするわけではないのです。慢性的な疾患がある場合は、すべてが在宅医療の対象になります。
たとえば、定期的に通院が難しくなるということは自力歩行が困難になることなので、全体的な身体状態がポイントになります。また病院で治療しても完全に治ることがない疾患があるということも基準になります。具体的には癌や脳梗塞、認知症、骨折後の整形疾患、呼吸器の疾患などが対象になります。慢性的な疾患は、すべて在宅医療の対象になります。たとえば末期癌、脳卒中後遺症、骨粗しょう症、肝硬変、特定疾患(特別な難病など)、老衰など多種多様な病気があります。
在宅医療は、総合病院で行なう医療とは違います。総合病院は、さまざまな専門診療科目に分かれ、専門医師が専門診療を担当します。また大掛かりな専門的医療機材もあります。医師を助ける多くの看護師、看護助手がいます。専門的な病気を専門的に治療するのが病院です。
在宅医療は、訪問診療するひとりの医師の経験的な診察が大きな割合を占めています。その医師を中心にして、訪問看護や訪問介護、薬局などがチームを組んで、穏やかで安定した生活を続ける事ための総合的な支援を行なうということになります。
従って病気の種類を問わず、在宅医療を受けたいと願う場合は、訪問診療を受けることができますが、一方、特別な病気を治療するためという場合には、その特別な病気を治療できる医師が担当しない限り在宅医療には適しません。
全身状態の主治医として「内科」の訪問診療について申し上げますと、おおよそ2週間に1回の割合で訪問診療に来てくれます。緊急の時に往診に来てくれる先生もありますし、電話で相談に乗ってくれる先生もいます。
また、医師だけでなく、訪問看護や訪問介護、訪問リハビリなどとの連携もアドバイスしてくれます。入院を希望する場合は入院先の病院を探してくれます。
具体的には、内科的な診察、さまざまな慢性疾患に対する指導・管理・投薬加療をしてくれます。薬の種類によっては注射や点滴・中心静脈栄養の管理をしてくれます。腹膜透析の管理・酸素療法・経管栄養(胃ろうの管理)・人工肛門の管理・人工膀胱の管理・人工呼吸器の管理・尿道留置カテーテルの管理・気管切開部の処置・心ペースメーカーの管理・褥瘡(床ずれ)の処置、看取りを前提にしたターミナルケアにも対応してくれるのが一般的です。在宅医療を受ける方の主な基礎疾患は、以下のようなものが上げられます。
1.脳血管障害後遺症、多発性脳梗塞、脳血管性認知症
2.老人性認知症
3.老人性運動器疾患(骨粗しょう症、圧迫骨折、変形性関節症、大腿頸部骨折) および、間接リュウマチ
4.神経難病(パーキンソン病、筋ジストロフィー、筋萎縮側索硬化症、脊髄小脳変性症)
5.悪性腫瘍末期
6.慢性呼吸不全
7.合併症を伴った糖尿病
8.老衰
つまり高齢者が持っている疾患については、ほとんど在宅医療で診る事ができます。ただし、医師によっては特定疾患を診ない場合もありますから、担当医師にしっかりと聞いてください。また広い観点では高齢者だけではなく、すべての年齢のすべての症状に対応するのが在宅医療ですから、どうぞ、個別に相談してみてください。
最近、ファクスを送ると薬を自宅に持ってきてくれる、いわいる「宅配サービス」をする調剤薬局があります。しかし病院に行くのがめんどうだから在宅医療を受けるという意識と同じに、ただ取りにいくのが面倒だから持ってきてもらうということではなく、薬剤師という専門職に、薬剤管理をしっかりとしてもらうという意味で、在宅医療を選ぶと同じように薬局を選ぶことをお勧めします。
医師からの処方箋を受けた後、数日後に薬剤師が在宅を訪問し、薬を間違えずに飲みやすいように一包化してくれたり、薬が変わった場合の説明をしてくれたり、前回の薬の残りを整理してくれたりします。このことに対しては、在宅薬剤管理指導料350円(1回)が必要になります。月2回で700円が平均的な費用です。広い意味で医師がご自宅に来て診察することは、すべて在宅医療ですが、この検索サイトで定義する在宅医療は、病院や診療所や訪問看護などが一体になって、在宅で暮らす方を計画的に診療していく訪問診療のことです。その中には定期的な訪問診療もあれば、緊急に来てくれる訪問診療も含まれます。ご本人の生活に365日34時間、寄り添ってくれるのが在宅医療(訪問診療)であり、往診と対比する言葉としては訪問診療がいいかもしれません。
「往診」とは、医師が在宅に行って病気を診る行為の意味ですが、いつでも来てくれることを意味するわけではありません。また総合的に希望者の病状を把握した上で診察してくれるとも限りません。近くの診療所やクリニックに「往診をお願いします」とお願いしても、来てくれる場合と来てくれない場合があります。現在、定期的に受診している近隣の診療所があれば、まず、その医師に聞いてみましょう。在宅医療を受け持ってもらう医師との関係で一番大切なことは、信頼関係を持てるかどうかです。少しでも今まで顔見知りの近隣の医師がいれば、そこから聞き始めるのがひとつの方法です。そのほか近くの総合病院の医療相談室、地域の訪問看護ステーション、医師会、地域ケアプラザ、ケアマネージャーに聞いてみるのも方法です。
遠くに素晴らしい評判の医師がいても、来てくれないと在宅医療を受けることができません。まず、近所から探し始めることが大切です。実はそのために全国すべての方々に気軽に利用してもらえるようなインターネット上の在宅医療担当可能医療機関の検索サイトがこの「在宅医療ステーション」の役割となるわけです。医師の「善し悪し」を簡単に見分けることは難しいと思います。「善し悪し」の基準も受ける患者にとっても違うでしょう。最終的に一番大切なことは信頼関係ですが、選び始める時点で信頼できるかどうかは分かり難いでしょう。どんなに素晴らしい医師でも、在宅医療の場合は在宅まで来てもらわないと成り立たない関係ですから、選択肢はそんなには多くないかもしれません。
医療技術はもちろん大切でしょうが、在宅で高度医療ができるわけではありません。不安だらけの家族の話をじっくり聞いてくれて、人間的な対応をしてくれる医師がまずはいいのではないでしょうか。
ホームページをもっている医療機関は、それも参考にしてみましょう。具体的に緊急出動した回数まで記載しているところもあります。入院中、病院の主治医の医師に、退院後の在宅医療を希望することをはっきりと伝えてください。主治医の医師が在宅医療を担当してくれる医師を紹介してくれるかもしれませんし、相談の方法や窓口を教えてくれるかもしれません。
病院が在宅医療の医師を紹介してくれない場合は、さまざまな方法でご本人やご家族が在宅医療を担当する医師を探すことになります。病院の主治医は、退院時には在宅医療を担当する医師宛に、病院での治療の経過などを記録した「診療情報提供書」を書いてくれます。
在宅医療の医師の中には、入院中に病院を訪問してくれて、退院時の医師と家族との話し合いに参加してくれる場合もあります。どのような医療を受けるかは、すべて患者や家族の自由ですから、もちろん在宅医療を受けていて、再び病院に戻ることも可能です。在宅医療を受けながら入院して、そのまま病院で最後を迎える場合の方が実際は多いかもしれません。実際、しっかりとした看取りが出来る在宅医療機関が少ないのも現実です。
しかし、退院後、再度の入院に対して、病状によっては難色を示す病院もありますから、よく相談してみてください。医療、看護、介護などがバラバラに支援するのではなく、連携していくことがきわめて大切なことになります。まず在宅医療機関を探して、看護や介護について相談していくことを考えましょう。あるいは先に看護や介護の事業所の支援を受けているのでしたら、逆に在宅医療の医療機関を尋ねてみましょう。
まったく選ぶすべがない場合でも、この「在宅医療ステーション」で住所から検索して、近くの在宅医療機関に相談することから初めてみましょう。何度も相談しながら、信頼関係を作っていって欲しいと思います。在宅医療の医療費は、地方も大都会も全国まったく同一の、国の決めた料金体系に従っています。
月に2回以上定期的に訪問し、365日24時間体制の「かかりつけ医」になってもらう基本料を「在宅医療総合管理費」といって、一般的には4200点(1点10円)です。それに加えて、定期的に決められた訪問診療が830点です。これ以外に緊急に往診した場合は650点で、これは時間帯よって2倍、3倍となります。これらを合算したのが、1ケ月の医療費になります。
医療保険の自己負担金が1割の場合は、たとえば月2回の定期訪問診療、2回の緊急の往診を受けた場合で8,000円前後です。この他、処置をした場合など診療内容によって追加費用が必要ですが、上限が自己負担の上限は1万2千円と決まっています。
また、在宅医療を受ける場合は、当然、介護保険を使った介護サービスを受けることも加わります。たとえば要介護3で、ほとんど限度額いっぱいのサービスを受けた場合の自己負担額は2万6,000円程度になりますから、医療保険と介護保険を使ったサービスを合わせると4万円弱の費用が必要となります。
目安になる一覧表を示しますので、参考にしてください。
世帯の収入が一定基準以下になった場合(低所得者)、あるいは被保険者の属する世帯の収入が著しく減少した場合(所得激減)、あるいは災害により住宅等に損害を受けたとき(災害)などの医療費の減免措置があります。
しかし、在宅医療に関わる医療費そのものを減免する制度はみつけることができませんでした。まずは、最寄りの役所や医師会の「在宅医療相談窓口」で相談してみてください。生死を分けるような状態と判断し、しかも延命を望む場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。救急車を呼ぶべきか、病院へタクシーで行くべきか、よくわからないという場合は、まずは在宅医療を担当している医療機関へ連絡してください。また地区によっては、救急相談センターを設置しているところもあります。
もう、これ以上の医療行為はしないと決めていても、目の前で苦しんでいる状態を見ると、見ていることに耐えられず救急車を呼んでしまう方もいらっしゃいます。
在宅医療で患者を支えている時の家族の正念場です。いざという時に動転しないように、日頃から担当医師と状況を想定して何度も相談しておきましょう。予め決まっていることが望ましいと思います。まず生死に関わるような重篤な状態で、延命を希望する場合は救命救急隊員の判断で、救命救急センターや高度救命救急センターへ搬送されます。この場合は、病院を指定することはできません。その時々、救命にベスト病院が選択されます
生死がその場で左右されないような状態と判断された場合は、その他の病院になりますが、そのときに「指定する病院はありますか」と聞かれると思います。その時に搬送先の病院のめどがあることは望ましいです。たとえば全体的には在宅医療の訪問医師に主治医になってもらいながら、脳梗塞の既往歴があり、その専門的な診断については総合病院の専門医師に担当してもらって、いざ脳梗塞が再発したときは、その総合病院を搬送先に指定できるように、日頃から専門医師と連携しておくといったことです。
しかし、そうしていても、搬送先の病院のその時の都合で断られる場合もありますので、まず、何を優先するのかを判断するしかないと思います。そのような事態を想定して、在宅医療を担当してもらっている医師に日頃から相談しておくとよいでしょう。在宅で最後を迎えるということは、在宅医療を受けることのきわけて大きな目的でもあります。高齢者の方の終末期をデータで見ると実に八割以上が病院で亡くなっているのですが、本当は逆に八割以上の方が住み慣れた自宅で最後を迎えたいと願っているということです。
在宅医療の大きな目的は、繰り返しになりますが、住み慣れた自宅で最後を迎えるということでもあります。担当する医療機関に在宅での看取りの意思をはっきりと伝えて、一緒に準備していきましょう。自宅でも麻薬の取り扱い資格を持っている医師が病院と全く同じように使用することができます。
最近、使い易い麻薬が続々と登場しています。速効性を発揮する液体の麻薬や、安定した血中濃度を保障する貼り薬の麻薬などがあります。肉体的な痛みには、そのような麻薬を使用します。まれに麻薬では効きにくい神経性の痛みもありますが、これはペインクリニックと連携して、神経ブロックなどを検討すます。心の痛みなどは、在宅だからこそ和らげることができる可能性が高いものでしょう。看取りとは、近い将来に死に至ることが予見される方に対して、その方の生きていることを尊厳しながら、最後の瞬間までの終末期を見守っていくことです。看取り介護は、もちろん、ただ見ていることではありません。その方の身体的、精神的な苦しみを出来る限り軽減し、穏やかな日々が過ごせるようにお手伝いをします。
お食事を取る事が難しくなると、目に見えて痩せてきます。2週間から1ヶ月程度の期間呼吸が止まりますが、残された時間が週単位から日数単位になった時の様子は、ほとんどの時間、眠っています。どうぞ、家族のみなさんで見守ってあげてください。広い意味では、生命を延長させるためのすべての医療処置を言いますが、ここでは、終末期、回復の見込みがない状態の時に、死亡時期を「遅らせる」医療行為のことを説明します。まず口からご飯を食べることが出来なくなった時に、点滴や中心静脈栄養、経管栄養など、さまざまなチューブを通して栄養を入れることがそれに当たります。また輸血をすることや人工呼吸器による酸素の吸入などもそうです。いったん延命の処置をした場合、それを家族の医師で一方的に中止することはできませんので、延命処置については医師とよく相談してください。
心臓や呼吸が止まったときに、心臓マッサージで心臓を再び動かそうとしたり、人工呼吸により脳に酸素を送ったりする心肺蘇生法が究極の延命処置と言えます。この件についても、充分に相談して決めてください。動転して救急車を呼んだりする場合も多いものです。
一方、できる医療処置は何でもして、できるかぎり延命して欲しいというご家族もいます。医師は、家族の意思を尊重しながらも、医療的に意味のない治療は行なわないという倫理観を持っているはずで、家族と対立する場合もあります。これらは訴訟にもなりかねない事態も予想されますから、双方でよくよく相談して、信頼関係の上で、決定していきたいものです。延命処置をしないと決めることは、とても勇気のいることで、時期も難しいものです。ご本人が元気なころから「延命処置はしないでくれ」と明言していたにもかかわらず、家族の医師で人工呼吸器をつけたり、経管栄養の手術をしたりすることがよくあります。ご本人がどのように人生の幕を下ろすかということは、ご本人の意思だけでは決められず、家族の都合で左右したりもします。
終末期に延命措置を施すというは、死期をのばすという意味です。それがご本人にとってどういう意味があるのか、あるいは家族にとってどういう意味があるのか、よくよく相談してください。看取りと決意したのなら、救急車は呼ばないで、ご本人と一緒に、在宅で最後の時を迎えましょう。その時、確かに苦しそうかもしれませんが、それは一時の苦しみです。もし救急車で救急救命センターに搬送され、人工呼吸器等を装着することになり延命したとしたら、その苦しみが長く続くかもしれませんし、そもそもご本人が望んだあり方ではないでしょう。
在宅医療を受けているわけですから、救急車を呼ぶのではなく、在宅医療を担当している医師に連絡して相談しましょう。臨終の瞬間に訪問医師が立ち会えれば理想的ですが、現実的には、その瞬間に居合わせることは難しく、呼吸停止後の訪問が一般的です。したがって、在宅においては家族が臨終に立ち会う覚悟が必要です。
臨終間際と感じた場合は、予めの取り決めに従って医師に連絡し、呼吸停止あと、医師に来てもらって死亡診断書を書いてもらいます。大切なのは不安になったときに医師と連絡がとれることです。深夜の呼吸停止の場合では、次の日の朝の訪問になる場合もありますが、法的には問題ありません。看取りになる前に、訪問医師と充分話し合っておきましょう。この「在宅医療ステージョン」は、医師をランク付けしている検索サイトではありません。在宅医療が日本の医療を支える素晴らしいものだということを多くの方にお伝えし、在宅医療を求める方に最適な在宅医療機関を紹介するお手伝いをするためのものです。出来る限り、それぞれの在宅医療機関が分かるような情報を集めていきますので、その情報の中からご判断ください。
まず対象者の在宅の郵便番号を入力し、次に番地入力すると、その場所に近い順番から在宅医療を行なっている医療機関が検索できるようになっています。名前を調べ、その上で、その医療機関のホームページを見たり、また直接周辺の病院や地域ケアプラザなどに聞いたり、近所の方々に相談しながら、どうぞ、皆様にとって最適な「よい先生」が見つかることを願っています。